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の間、一部の船舶に共存するが、このEPIRBの導入の時点では、衛星でのその信号の受信を意識していたわけではない。
第二として、当時アメリカでは、400MHz帯の電波を使用して、海上の浮標、風船、渡り鳥などの動物に小型の無線機を搭載して、その航跡とデータを測定する衛星システム、ランダム接続測定システム(RAMS)の開発が進められており、その後このシステムはフランスに技術移転され、アルゴス(ARGOS)として運用されている。幸い、ARGOSに近い406MHzで送信電力が5Wを限度とするこの種の機器への周波数の割当てがあるので、新しい開発が進められることになった。
こうして、この二つのシステムは、利用可能な衛星での予備実験の後、アメリカ、カナダとフランスの共同開発のSARSATが決定し、後に旧ソ連も参加して、COSPAS/SARSATとなった。このシステムで、地上の送信機の位置を衛星で測定するには、航行衛星のNNSSの測位原理の逆を使用する。すなわち、衛星は定められた軌道を通って高速で地上の送信機に接近し、その後離れていく。そこで、送信機の送信周波数が一定でも、衛星での受信周波数はいわゆるドップラー効果を受けて、その受信周波数が高くから低い方へと変化をする。この受信周波数の変化曲線は送信機と衛星との距離の変化をするので、そのデータ処理で送信機の地上の位置が決定できる。
このCOSPAS/SARSATシステムは、前述のように二つのシステムからなるが、前者の121.5/243MHzのシステムでは、通信衛星のように単に地上からの信号を衛星中継するだけであるので次の欠点がある。
?その有効範囲はEPIRBと地上局とが同じ衛星を見て、ある時間連続的に受信できる範囲に限定されること。
?既存の安価な送信機を使用しているので周波数の安定度が十分でなく、そのため測位位置の精度が悪く、軌道の両側に位置が出る恐れがあること。
?EPIRBの識別ができないこと。ただし、これらは、すでに海空で千数百人を救助しているという実績をもっている。
これに対して後者の406MHzのシステムは、衛星上で受信周波数の測定をして、EPIRBの識別符号などの送信内容を衛星上で記憶し、繰返してそれを放送するのですべての地上局はそのカバレージに関係なく、衛星が回ってくれば全世界の遭難情報のすべてを受信でき、EPlRBも新しい規格で作られるので、測位精度も5?と良く、識別符号などのデータの送信も可能である。わが国では406MHzのEPIRBが制度化されている。
GMDSSには直接の関係はないが、間接的に関係のある衛星を利用して測位を行う航法システムに、GPSと呼ばれる全世界的な測位システムがあり、これはアメリカの国防省が開発を進めているが、高精度測位システム(PPS)と標準測位システム(SPS)の二つがあって、後者は全世界の民間に無料で解放されることになっている。このSPSは、50%の測位精度が40m,95%の測位精度が100mである。システムは、軌道傾斜角が55。、軌道半径が約26,500?の六つの軌道に4衛星ずつ、全部で24の衛星から構成されるシステムで、24衛星の内の3

 

 

 

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